2023年05月29日
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三百字小説『鬼警部アイアン斉藤』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 斉藤は鬼のように恐ろしいと言われた警部だった。ついたあだ名は鬼警部アイアン斉藤だった。

 しかし、彼は絶対に帽子を脱がなかった。

 そこで「実はハゲがある」という説が広まった。

 警察署一同は真相を探るべく、彼に秘湯旅行をプレゼントした。他に人がいない場所なら帽子を脱いで温泉に入るだろうと思われたからだ。

 ところが物陰から見ていた者達は驚愕した。帽子の下には鬼の角があったからだ。鬼警部は本物の鬼だった。

 それに気付いた斉藤は鬼の形相でみんなに迫った。

 「さてはおまえら、俺のハゲを見たな?」

(遠野秋彦・作 ©2023 TOHNO, Akihiko)

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